講師の言葉
破壊事故の約80%は疲労破壊に起因するとされています。疲労破壊の研究は歴史があり、携わる研究者は多く、情報は氾濫し、多数の書籍・研究論文が存在します。情報過多の中から適切な情報を選択、勉強、理解するには、破壊に関する基礎知識を必要とし、多大な時間と労力を要します。疲労破壊を代表とする時間依存型破壊としては、遅れ破壊、クリープ破壊があります。一方、非時間依存型破壊としては、衝撃破壊、過負荷による破壊などが知られています。これら多くの破壊様式には、共通する点と相反する点があり、「破壊」という一言では整理できません。この事実が技術者・設計者のみならず研究者、マスコミにも誤解と混乱をもたらしています。要するに、一般的に構造部材が「強い」という曖昧な表現は、破壊に対する抵抗力があるか否か、またどの破壊様式に対する表現であるか明確に回答しなければならないということです。
構造部材の設計者・技術者において、部材の強度は設計の基本となる重要な因子です。疲労破壊においては、この部材の強度と共に、部材の構造、変動負荷、材料の3大要因を有効に制御し、その防止対策の構築が求められます。本セミナーでは、疲労破壊に携わる技術者・設計者は疲労破壊防止対策に有効な指針を取得し、加えてこれから疲労破壊の基礎を学ぶ意欲のある技術者・設計者においては、疲労破壊の有益な基礎知識を得る場となると確信しています。
疲労の基礎研究を職務とする大学の研究者とは異なり、疲労破壊防止対策が第一である会社の技術者・設計者においては、疲労破壊を狭く詳細に理解することにより、疲労破壊を大局的に理解し、従事している仕事に生かすことが大事であると思います。本セミナーでは、疲労破壊防止対策構築のため、疲労破壊の主要因である塑性変形、構造物の破壊におけるき裂の力学である破壊力学などを疲労破壊と共に平易に説明します。
書籍・研究論文に記載している綺麗事のみならず、事故防止策のノウハウとしての生々しい情報もお話しします。高専・大学・大学院では講義を受けていない、先輩から教えてもらえない情報、学会と協会では質問できない、教えてくれない、得られない情報を取得する絶好のチャンスです、受講をお待ちしています。